漂書

ぼちぼちと、ゆるゆると

超探偵事件簿 レインコード ネタバレ感想

クリアしたので感想など。

 

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「記憶の断片」は、クリア時点では2つほど足りなかったけど、目処は付いていたのでさくっと全回収済み。

とりあえず、小高和剛は心底性格が悪いと初めに言っておく。

そして、やっぱりとんでもなく最高なシナリオライターでありクリエイタ。

そのことを再確認させてくれた作品だった。

ダンガンロンパシリーズは絶対絶望少女も含めてコンプ済みなので、そちらとの比較も交えながら所感を書いてみる。ちなみにV3は超絶名作と思ってる派。

ネタバレ全開で書くのでヨロシク!

 

 

 まず、ある程度以上にミステリを嗜んできたプレイヤなら、本作で使われている様々なトリックや「謎」について、新鮮味は殆ど無かったと思う。おそらく初めの方で大抵のトリックや謎について予想できるし、その予想を裏切る展開になることは、自分は最後まで無かった。そういう意味では、ダンガンロンパシリーズよりもライトな作品と言えるかも。

 ただ、小高和剛の真骨頂はパズラー的な本格としての側面にはない、と自分は思ってる。そうではなく、シンプルに「お話」を楽しませる、その手腕にこそ魅力がある。筋立てや展開、演出といった、「ゲームだからこそ出来る表現」を突き詰める手腕。

 本作では、謎解きの補助線として「謎迷宮」という仕組みが導入されている。その中で、主人公ユーマは推理デスマッチをメインとした様々なギミックを乗り越えていき、その過程でトリックの解明やフーダニット、ホワイダニットといったミステリの骨格を一つ一つ積み上げていく。言ってみれば、「ミステリ入門」と呼びたくなるような仕掛けで、これはダンガンロンパシリーズで確立した「学級裁判」の仕組みのアップデートというか、「ミステリの読み方」をさらに丁寧に教えるシステムだと感じた。

 この仕掛けが面白いのは、推理ADVで起こりがちな「探偵役とプレイヤとのギャップ」をできるだけ排除できるようにした仕組みである、というところだと思う。すでにトリックが分かっているプレイヤにとっての「そんなこともう分かってるよ……」みたいなセリフを探偵役や助手役に言わせる必要が無くなり、「解決を邪魔しようとする謎怪人」を倒すために謎を解き明かすプロセスを辿る、というスタイルになる。一方、まだ謎が解けていないプレイヤには、考えるポイントを一つ一つ提示し、それを解かせていくことで自然と解決へのロジックが組み立てられ、最後の「超推理フィナーレ」で「謎を解いた快感」を無理なく味わうことが出来るようになっている。見事。

 登場人物たちの魅力については、ダンガンロンパシリーズと同様、強烈な個性でキャラ立ちさせ、小松崎類の唯一無二な絵柄で彩られているので、ほんとこのコンビは最強だなと実感した。個人的にはやっぱり死に神ちゃんがナンバーワンかなー。倫理観に欠ける発言やウザさが度を越す局面も多々あって、全面的な好意を感じるほどでは無かったし、終盤で人間性が出てきたところは唐突感が否めなかった部分が無かったとは言えない。2章で4章ラストのような展開があっても良かったかなと思ったり……。あと、真相に辿り着くと真犯人が死ぬという要素を活かしきれておらず、単に後味の悪さだけが残る仕組みになってしまっていたのも勿体なかった。

 登場人物だと、他にハララが好きだったけど、1章で出番はほぼ終わってしまい、その後はちょい役程度しか出てこなくなってしまったのが残念だった。各章ごとに「超探偵」の能力を明らかにし、それを使って事件を解決していくスタイルだから仕方ないとはいえ、ハララの能力はギミックとしてもかなり面白いものだったので、もっと活かせたはずと思ってしまう。基本的に夜行探偵事務所の面々はみんな魅力的だったから、各キャラにスポットを当てたシナリオはもっと読んでみたい。今後追加されるシナリオで読めるのかな。あー、忘れちゃいけない教会のシスター。ビジュアルといいキャラクターといいドストライク過ぎた。依頼が2つあってキャラの掘り下げがあったの嬉しかったし、モブキャラで終わらすの勿体なかった。

 あとは、これはダンガンロンパシリーズから引き続きだけど、とにかくギミックの操作性が悪い。特に推理デスマッチについては学級裁判のギミックを超えたとは言えない。ただ、QTEについてはそこまでストレスを感じなかったし、死に神ちゃん危機一髪も特に問題はなかった。大進撃!死に神ちゃんはタイミングに慣れるまで苦労した。ミニゲーム的なものやアクションゲーム的なギミックについては、その道のプロがスタッフに参加したら劇的に良くなると思うのだけど、なかなか難しいんだろうか。

 とりあえず、パズラー的な本格ものが好きな人にとって物足りないとは思うけど、推理ADV好きならプレイして間違いのないタイトルだと思う。シーズンパスも購入済みなので、この後にどういうサブストーリー?が追加されるのかを楽しみにしたいし、続編も期待したい。

 最後に、小高和剛は本当にミステリが好きなんだなと。4章は言うまでもなく森博嗣の「すべてがFになる」]が元ネタなんだけど、あの作品は停電の中でロボットに両手両足が切断された遺体が乗せられて密室から出てくるところが事件の始まりなのよね(記憶がうろ覚えなので違ってたらすまん)。それを受けて本作では、ロボットを使って密室へとアプローチするだけでなく、その上に犯人が乗っていたというトリックなわけで、見事なオマージュだと感動した。0章と5章は言うまでもなくアガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」と「そして誰もいなくなった」が元ネタで、5章はタイトルだけ流用だけど、0章の舞台はオリエント急行、事件の中身はそして誰もいなくなったという合せ技(5章はミステリというよりSF的な筋立て)で回収しているのが素晴らしい。2章、3章と5章の元ネタは自分には分からなかったので有識者の解説を聞きたいところ。

 小高和剛の性格は最悪だと思うけど、プレイヤを楽しませるために全力であることに疑いの余地はない。そして、何と言っても卓越したワードセンス。短いセンテンスでズバッと本質を突く言い回しや、多種多様すぎるユーモアに満ちた罵倒語。この人が作る作品であれば今後も作者買いし続けるし、きっと裏切られることは無いと信じられる作品でした。面白かった!