漂書

ぼちぼちと、ゆるゆると

メタルマックスゼノリボーン クルマ操作について

 本作の特徴の一つに、クルマ移動時の操作系刷新があります。この刷新については、個人的に、ちょっと前に書いた「射撃」と同じく、素晴らしい発明だと感じています。

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  これまでのシリーズでは人間移動とクルマ移動は同じ操作でしたが、本作のクルマはR2トリガーで前進、L2トリガーで後退、左スティックで方向指示という形になっています。また、R2/L2トリガーを同時に引くと、左スティックでその場の回転(超信地旋回というらしい)が可能です。

 また、本作では様々なクルマが登場しますが、それぞれ移動時の挙動に特徴を持っています。10式やウルフが標準的な動作で、バギーやバスなどのタイヤで走るクルマは動きが速く、おチビちゃんやロンメルゴーストと言った重戦車は遅いです。さらに、同じタイヤで動くクルマでも、バギーは曲がるときの半径が小さく、バスは大きいという具合に、それぞれのクルマに合わせた挙動が備わっています。

  なぜ、このクルマ操作の刷新が素晴らしい発明だと感じたのかについてですが、一言でいうと「戦車というキャラ」の個性化(差別化)の発明だと感じたからです。

 これまでのシリーズ作品では、戦車(クルマ)のキャラ付けは「穴」と「固有兵装」によってなされてきました。もちろん外観という大きな要素もありますが、その要素はゲームそのものには影響せず、あくまでプレーヤーの趣味嗜好の範囲内に収まるものでした。「穴」と「固有兵装」については、戦闘時の強さに直結する要素です。メタルマックスというシリーズは、いかに戦車(クルマ)を強くするか、というのがゲームデザインにおける最重要ポイントです。クルマを強くして賞金首を倒し、報酬の懸賞金でクルマをさらに強くする、というのがベースになっているためです。

 「穴」と「固有兵器」でキャラ付けをしてしまうと、このゲームデザインと干渉してしまいます。開けられる穴の種類を制限してしまうと、積める兵器が制限されることになります。3あたりから導入されたCユニット特性などでラッシュ構成こそが正義、みたいな方向になってしまうと、「強いクルマ=ラッシュ構成に見合った兵器が積めるクルマ」となってしまい、「好きなクルマ」が使いづらいという状況に陥ります。

 一方「固有兵器」については、例えば賞金首のドロップ品のようにレアな兵器より強くしてしまうのはモチベーション低下に繋がってしまいます。さらに、先程は「趣味嗜好」と書きましたが、ここにも穴の位置や固有兵器が影響してきます。個人的に、「ドリル」という兵器は趣味の領域(あるいは特殊な用途:岩を砕く、穴を掘る、地中の敵を攻撃する、など)に収めておいて欲しい兵器です。ウィングなんかも好きじゃなかったです。しかし、こういう兵器が「固有兵器」として付いてしまうと、そのクルマ自体を利用したくなくなってしまいます。また、固有兵器は「穴」を塞ぐことにもなるので、「穴」の問題と同じ結果になってしまいます。

 ここに、本作で刷新されたクルマの挙動によるキャラ付けを配置してみます。すると、上記の問題点が綺麗に解決されていることに気が付くはずです。

 「でも、お気に入りのクルマがフィールドで使いづらい(遅い、旋回性能が悪い)なら、そのクルマを利用するモチベーションが下がるのでは?」という意見は最もです。ですので、自分は改善策を提案したいと思っています。

 その改善案とは、「動作」のカスタマイズを可能にすることです。

 いわゆるレースゲームのような、ゴリッゴリのチューニングなんかは不要だと思います。個人的に出来るようになると良いなと思っているのは下記です。

  • 積載量に空きがある場合、積載量の空きに従ってクルマのスピードが速くなる
  • 総重量が多ければ多いほど旋回性能が落ちる
  • ロケットブースター的なものを補助装置で付けることも可能にする

 この3つの要素を追加するだけで、プレイヤーの好みに応じたクルマづくりが可能になるのではないかと考えます。また、「重量」だけでなく「車幅」「車長」などのパラメータを追加することで、「このクルマじゃないと行けない」みたいなイベントを作ることも可能です。本作では、本来クルマでは通れない場所が、野バスなら通れるという現象が発生しています。個人的に、これはバグではなく、意図的にデザインされたものではないかと考えています。同じように、「逃げろ!」や「追い詰めろ!」も可能ですね。3のスピードキングイベントなんて、まさに典型的な例ではないでしょうか。

 さらに、「敵から逃げまくって先に進む」という行為も、より研ぎ澄まされることになります。貧弱な兵器(兵器未搭載すらある)と薄い装甲だけど、移動速度と旋回性能はピカイチなので、敵に捕捉されさえしなければ、いくらでも自由に行動できてしまう。ここでポイントになるのは、本作の仕様である「戦闘はコマンドバトル」であることです。つまり、捕捉されて戦闘が始まってしまった場合、自慢の機動力は全く意味を為さなくなってしまうわけです。敵の弾を避けるなどのギミックも不要だと思います。そういうゲームがやりたければ、他に幾らでも選択肢はあると思うので。

 機動力が上がるため「回避率」などに影響させたくなるところですが、これはチューニングが非常に難しいと思われることと、「捕まったら死」という分かりやすい構図にデフォルメしたほうが、プレイ体験は上がるのではないかと考えます。

 また、根幹に関わるイベントには、この要素を全く影響させない(速かろうが遅かろうがクリアできる)ようにすることも大切だと思います。

 さらに、「移動用のクルマ」を選べるようにすることもありかもしれません。「移動用のクルマ」を選んでいる場合、体としては、「プレイヤーが操作しているキャラは移動用のクルマに乗っており、戦闘時は戦闘用のクルマに乗り換える」ことになります。本作では、クルマ移動時に表示されるのは1台だけですので、戦闘シーンに移行すると、プレイヤーが操作しているキャラは戦闘用のクルマに乗り換えることになります。また、移動用のクルマを利用しない場合は戦闘用のクルマで移動すればいいわけです。

 このとき、「射撃」は移動時用のクルマで行う、という形になります。これにより、「いいとこ取り」が出来ない仕様に出来るのではないかと思います。そもそも、本作で言うところの10式やウルフのような、「標準的」なクルマの移動速度が快適なものであれば、あえて移動用のクルマに乗り換える必要もなくなります。

 ここまで読んだだけでは、「クルマ操作じゃなくクルマの性能の話じゃない?」となると思いますが、まあそう慌てなさんな。

 上記のように、クルマの移動性能に可能性が生まれた場合、本作で刷新された操作系の魅力が、さらに際立つことになると思います。従来のように、右スティックで人間操作もクルマ操作もOKということも可能ですが、おそらく、その場合には上記のような差別化が、あまり機能しないのではないかと自分は感じたのです。

 具体的に言うと、すでに言われている「人間操作時の挙動」と同じことになってしまうわけです。人間がその場で方向転換する場合、リアルの動作はすっと出来ます。振り向いたりするのもその場で出来ます。一方、クルマはどうか。出来ないですね。右スティックだけで操作する場合、ここが不自然なものとして残ってしまいます。爆速で走っているクルマの方向転換が気持ちよく出来るようチューニングするのは、「アクセル」と「ハンドル」を切り分けるからこそ可能になるのではないかと思います。

 もちろん、ラジコンのような操作も可能にしておいた方が親切だとは思います。この要素はあくまで「RPGとしてのシステム」においては不要なものであり、「味付け」に過ぎないからです。しかし、より「クルマを操縦している」という感覚になれるのは、確実に本作品の操作方法だと自分は感じました。初めは渋っている人でも、その大部分は、いちど経験してしまったら戻れなくなると思います。

 そして、このようなクルマ操作にした場合、「すさまじく軽量化して逃げ特化のプレイをする」というプレイスタイルを行うために、プレイヤーの運転スキルが必要になってきます。くっそ速くてギュンギュン曲がるクルマを、思い通りに操作するのは大変です。本作のバギーはかなりピーキーであり、思い通りに制御するのは困難です。さらに、現代のように、綺麗に舗装された道路なんてものはまず存在しないので、とんでもなくピーキーなクルマを、荒れ放題に荒れまくっている悪路で走らせないといけないわけです。しかし、ここに快感原則も眠っているわけです。「困難なことを、努力して乗り越える」ことは、快感原則として非常に強力です。

 一つ例として、自分のプレイを置いておきます。

 

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 本作の時点で、こういう遊び方が可能になっているわけです(失敗してますが笑)。これを更に発展させたらどんな事が可能になるんだろう?と思うと、想像するだけでワクワクが止まらないのですよ。

 以上、本作のクルマ操作は、「戦車を強くして敵を倒す」というシリーズに通底するデザインを、大幅に拡張できる刷新だと自分は評価しています。