漂書

ぼちぼちと、ゆるゆると

荒廃しているのは文化

荒廃なのではなく、多様化なのかもしれないけれど。

任天堂栄えて本屋潰れる 旭屋書店閉店の衝撃度(日刊ゲンダイ) - Yahoo!ニュース

ま、この記事が醸し出している頭の悪さは、とりあえず置いとくとして。

本屋さんが潰れてしまっているのは、素直に残念です。

書籍というのは、知の宝庫と言うよりも、文化の宝庫だと思うからです。

新書だなんだと教養に目を向けるのではなく、むしろ本質は娯楽にこそあると感じます。

物語を導線として、自分だけの世界に遊ぶことが出来る、そんな娯楽。

書籍というのは、最も純粋な文化の形なのではないかと思います。

とくにEntertainmentの分野において、これほど時代を切り取るものは他にありません。

言葉遣いから流行もの、服装や食べ物に至るまで、あらゆるものが内包されています。

映像作品にも、同じようなものは内包されている事は確かです。

しかし、情報量で比べた場合、圧倒的に書籍の方が大きいはずです。

視ることが出来るというのは大きいですが、「空気感」は出せません。

小説から得られる刺激というのは、他の媒体からは得られない種類のものです。

自らが描く理想の人物にや世界に、これほど簡単に出会える媒体はありません。

本を「読む」ためには、それなりに訓練が必要です。

文字から情景を想像し、その情景や人物を「動かす」必要があります。

この「動かす」ことを無意識に行えなければ、本を読む楽しみは感じられないでしょう。

本から知識を得る、ということも確かに重要ではあります。

けれど、それは最善ではありません。

知識を得るだけなら、その知識を持っている人から教えて貰うのが最善です。

その人の教え方が上手であればあるほど、より効率的に、かつ深く理解出来るはずです。

知識というのは、「活きて」いなければ糧にはならないからです。

活かすためには、その知識が必要とされる「現場」に身を置くことが重要です。

本というのは、そのための補助にしかならないと個人的には思います。

しかし「ものがたり」は、知識を得るためだけのものではないはずです。

それは、「経験」を得るためのものである、と思うのです。

この世では経験することが難しい出来事を、擬似的に体験するための手段。

それは、Virtual Reality、と言っても過言ではないと思います。

思考空間というのは、物理的な制約の一切無い、本当の意味で「自由」な場所です。

けれど人間というのは、本当の「自由」を前にしたときには固まってしまうものです。

行動原理というのは、基本的に経験の蓄積によって構成されています。

その為、何をしても良い、という状況に置かれると、逆に戸惑ってしまう。

だからこそ、「ものがたり」が必要なのだと思います。

そこで書かれている世界。

そこで書かれている人物。

そこで書かれている行動。

読書とは、ただ文字を追うこと、だけではありません。

実際の話、読書中には「文字」を意識することは稀なのではないかと思います。

ぼくの場合、読書とは「視る」ことです。「読む」ことではありません。

何を「視て」いるのか。自らの頭の中で展開される映像です。

この映像は、そんじょそこらの映画やGameなんかでは及びもつかないほど面白い。

ま、「ものがたり」の出来に大きく左右されますけれど。

少なくとも、文学作品の映像化よりは、数段上であることは間違いないです。

なので、「そのまま」映像化したような作品には、あまり興味は湧きません。

面白かった作品ほど、映像作品を観る気がしなくなります。

むしろ、それをどう加工するのか、という方が興味が湧きます。

閑話休題

なぜ、そんなに「脳内」の映像は素晴らしいのか。

それは言うまでもありません。自らの「理想」を投影出来るからです。

「素晴らしい風景」という一文だけで、どれほどの風景が産み出せるでしょう。

つまりは、そういうことです。

あー、本題からずれすぎた気がします。

本が売れない、というよりも、数が多すぎる、というのが問題の本質でもあるのでしょう。

良作というのは比率ではなく、あくまでも一定数しか世には出てこないと思います。

となれば「当たり」に出会う比率は、出版点数が増えれば必然的に下がってしまうわけです。

外ればっかり引いてしまっては、読む気が失せてしまうのも道理ではあります。

そろそろまとまらなくなってきましたが、無理やり展開します。

本屋さんで、ぱらぱらと未読作品の頁を捲る瞬間は、人生における幸福の一つです。

ずらっと並んだ背表紙から、心惹かれる題名に眼を奪われる瞬間もそう。

平台に並んだ表紙の美しさだけで、衝動的に手に取ってしまう瞬間もそう。

この愉しみは、ネット書店では、まだしばらく味わえないものだと思います。

結局、何を言いたいのか。

もっとFantasyやScienceFictionは増えるべき、ということです。

あー、ぐだぐだになってしまった・・・。