青少年ネット規制法
これ、本当に難しい問題だと思います。
適切な方法というのが、どういうものになるのか、判断が付きません。
と言っても、現在の法案に、無条件で賛成なんてのは愚の骨頂で。
反対は反対の立場なのですけど、じゃあどうするのか、となると、むむむ。
反対派の旗手とも言えるMIAUは、WIDE PROJECT他と共同で声明を出しています。
共同声明:私たちは青少年ネット規制法案に反対します - MIAU
ぼくはMIAUの支持者ですが、今回の声明に関しては、諸手をあげて賛成は出来ません。
問題点として指摘されている部分には共感できますし、全く同じ考えです。
声明の中で言えば、
私たちは、青少年が犯罪に巻き込まれないように努力するという社会的・倫理的な必要性を、とても強く認識しています。 また、インターネットを経由して行われる犯罪を防止するための積極的な取り組みも、大切だと考えていますし、明確に、かつ極めて限定的に定められた、現状の違法情報への取り組みを否定するものでもありません。と言う部分です。しかし、青少年を保護するためとはいえ、健全な情報を発信する個人や、それを支えるインターネット関連企業などにまで、情報発信・公開についての制限をかけてしまうことは適切でしょうか。インターネット上の広汎な情報を、単に青少年にとって有害であるとして法律によって規制することは、どんな手段であっても、結果的に国家による検閲に繋がりかねず、情報の発信やコンテンツの制作を萎縮させていきます。また、事業者に対して法律によって「有害情報」への対応を義務づけると、その経済的な負担は、零細事業者の多いインターネット関連企業の経営を直撃し、新たな官製不況を招き兼ねません。さらには消費者の PC 等にプリインストールされるというフィルタリングソフトウェア等のコストは、最終的に消費者に転嫁されることになり、フィルタリングを必要としない人にまでコスト負担を負わせることになります。
何度か書いているように、ぼくは、規制は最終手段だと思っています。
現在の情勢というのは、まだ八方塞がりとまでは言えないのではないか。
もっと、他にやれることが残っているのではないか、と思うのです。
ネットという媒体の特性上、細かい対処が難しいというのはよく分かります。
けれど、だからといって大枠でどかっと規制を掛けてしまうのは下策だと思います。
いちど規制を掛けてしまうと、それを外すのは本当に難しいからです。
共感できないのはこの部分。
「有害情報」への対処について、国家によるインターネットの制限ではなく、教育による情報リテラシーの向上と、民間事業者による自主規制の強化で対応することを提案します。この部分には賛同できません。
まず。
教育とは、何を教育するのか。それって、検閲とは何が違うのかな、と。
むしろ、それは洗脳と呼ぶべきだと思います。価値観を強制させるわけですから。
教育ってのは、本質的には洗脳と同じです。それは言うまでもありません。
そして、その「洗脳」を否定する気もありません。むしろ肯定します。
けれど、この主題において教育という洗脳を推奨するのであれば、検閲も肯定するべきです。
あと、「自主規制の強化」です。
日本語としておかしいような気がします。
企業に対して、自主規制を強化するように求める、ということ?
それ、「自主」規制じゃ無いんじゃない?と感じます。
我々は、拙速な議論で結論に飛びつくのではなく、事業者と利用者、そして青少年の意見を、日本のインターネット政策に正しく反映させることを求めます。そして、その結論は、インターネットを国家によって規制するものではなく、青少年がインターネットを使いこなすことによって、より情報社会の発展に繋がるようにするものであると確信しています。という結びには、やっぱり同意です。
そこへ至るための提案が、なんか違うんじゃないかなぁ、と思うのです。
と、文句だけではあれなので、稚拙ながら私見も書いてみます。
現在の問題点になっているのは、「有害情報」です。
これを、情報はネット上に置いたままで見えないようにするのがfiltering。
置いたままにしないで、ちゃんと消せば良いんじゃないのか、と思います。
悪用犯罪多発…警察庁「サイバーパトロール」民間委託:ニュース - CNET Japan
こういう事を行うのですから、有害情報を見つける効率は上がっていくはずです。
さらに言えば、一般からの報告窓口も整備するべきだと思います。
あとは上がってきた報告を審査して、問題があるようなら消せば良い。
審査を行うのは、国民が選出する専門機関員。
分野別に、幾つかの班に分けても良いですね。
任期は無限にしておいて、国民投票などで適時解任を行えるように。
投票はもちろんon-lineで。成りすましとかは公文書偽造。
消す時には、なぜそれを消すのかを明確に記載し、通達すれば良い。
そして、あまりに問題が多いISPについては、業務停止などの処置を行う。
悪質な業者や個人が特定できれば、それを逮捕することは現在の法律で可能なはずです。
あとは、量刑的な部分を整理して、必要なら罪状を追加しても良いかもしれません。
こういう感じで徹底すれば、国内での問題はずいぶん収まるのではないかと思います。
次は、海外の事業者を相手にする時、でしょうか。
この場合は、「消す」という対処が取れない場合が多いので、難しいように見えます。
けど、海外のserverに対しては、access経路が限られる。
であれば、海外と接続するIXに、それ専用のfilteringを導入すれば良いんじゃないかと考えます。
言うなれば、情報の税関みたいな感じで。
filteringは、contentsやkeywordみたいな「範囲型」ではなく、「個別型」にします。
有害情報を流しているsiteを静的にblockしていく感じ。
そのblack-listは、国内と同様の流れで作成していけばいいと思います。
さらに言えば、審査機関の権限が全世界を網羅できるものに発展すれば完璧。
ま、これは確実に無理だと思いますけれど。
と、ここまで書いて思いましたが、政府案と似てるように見えますね。
違いは、政府案がwhite-list形式なのに対して、black-list形式、って部分。
基本的に、このような規制案において、始めからwhite-list形式でいくのは愚策。
始めはblack-list形式で傾向を掴んで、最大公約で括っていくべきだと思います。
もう一つは、審査する機関のあり方。
「ネット政府」みたいな感じのを思い浮かべています。
現政府の下にあるのではなく、日本国憲法の下で、政府からは独立した機関として動く。
理想を言えば、警察や検察、弁護士や裁判所なども個別に準備したいところです。
そんでもって、独自の法律を制定するのが審査機関、みたいな。
問題は、審査機関員が特定勢力の傀儡になってしまった場合、ですか。
検閲の嵐になるでしょうし、対抗勢力の意見は悉く消されるでしょうね。
あと、これらの処理には、かなりの費用がかかる事になるでしょう。
その費用は、国が一括して徴収すれば良いと思います。言うなれば税金です。
Internetを利用する場合は、「情報税」みたいな名目でお金を取られることにする。
いま話題の道路特定財源みたいな感じです。
ここから得られる収入は、すべて上記の規制にのみ使用することにします。
そうすることで、利用者はcostが「見える」ようになります。
税金が掛かるとなれば、今は興味を持っていない国民も、興味を持つでしょう。
「そこまでして止める必要があるのか?」という議論が活発になるかもしれません。
と、すでにお分かりのように、現在の日本国政府のあり方そのものを変えるべき、という結論です。
この規制案を逆手にとって、その為の第一歩にしてみるのはどうだろうか、と。
まー、今は只の妄想に過ぎませんけど、近い将来にはあり得ると思います。
この流れを止めるために、規制しようと躍起になってるように見えるのですよ。
ネットに対する法整備は、基本的に規制の方向ばかりへ進み過ぎだと思います。
「健全な発展」を求めるのであれば、緩和させなければならない部分も多いはずです。
そういう部分を議論せずに、規制ばかり行おうとする行政には、違和感しか感じません。
社会的な問題の殆どは、構造的な欠陥に起因しているのではないかと思います。
立法を担う部分の人員構成において、適切な調和が崩れてますから。
まあ、民主主義ってのはそんなもんだと言っちゃえば、それまでなんですけれどね。