漂書

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JUGEM IT! from 派遣切り批判をあえて批判する

実を言えば、財部氏のことはあまり好きじゃないのです。

と、別に言わんでも良いことから始めてしまいました。いや、まあ、いちおう。

ただ、記事の良さは、対象への好悪とは別物ですから。

財部氏の知識だとか見解だとかも、さすがの本職だと思ってますし。

TVとかで見かけるのが嫌なだけなんです。アクが強い人は総じて苦手。

と、前置きが長くなってしまいました。

派遣切り批判をあえて批判する | 時評コラム | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉

この記事は、ぼくがここ数日ずっと思っていたことを書いてくれているなあ、と思いました。

本当はもっと早く取り上げたかったのですけど、もごもご。

“派遣切り批判”を批判したい。マスメディアはつねに短絡する。
という始まりが、もう素晴らしいです。本当にその通り。

ここ数日の報道は、その「間」にあるべきものが悉く無視されていて、なんとも気持ち悪いと感じてます。

いざという時に雇用調整に踏み込むことは、企業として当然の経営判断だ。
というのは正論。

営利企業である以上、収支に関する考えが、総てに優先するのは当然です。

それをせず、いたずらに情ばかりを重視するのは、経営者としては最低です。

まあ、人としての魅力は、かなり良いですけれどね。でもそれは、経営者という職種においては致命的。

2頁目からの主張には、正直、首を傾げてしまいそうではあります。

ただ、そういう主張もあって然るべきだとは思います。

何でもかんでも最後は国に頼るんか、とも思いますけれどね。

基本的に、いわゆる"union"というものを、昔からぼくはあまり信用していません。

なんていうか、彼らは「労働者の味方」ではない場合が殆どなんじゃないかと。

まあ、これには多分な偏見が含まれていることは自覚しています。

けどその偏見を差っ引いても、なんか違うんじゃないかなあ、と思うこと多々です。

ちょっと脱線したので、元に戻します。

契約社員なのであれば、まあ多少は理解も出来るかな、とは思います。

でも、派遣社員が「派遣先」の会社に対して文句を言うのは、どう考えても筋が違う。

派遣社員が雇われているのは、あくまでも「派遣元」の会社です。

だとすれば、本来、派遣社員が文句を言うべきは、「派遣元」の会社です。

或いは、「派遣先」の会社へ抗議をするのは「派遣元」の会社であるべきでしょう。

純化すれば、「派遣社員」→「派遣元」→「派遣先」とならなければおかしい。

けどこれも、よくよく考えればちょっと違うんじゃないの、と。

言ってみれば、「派遣先」は「派遣元」のお客さんなわけです。

お客さんは、自分の懐が寂しくなれば、必然的に財布の紐を堅くするでしょう。

そうなれば、いままで買い物をしていたお店でも、行く頻度は自然と減っていくでしょう。

そして、そのお店の経営状況は、当然の如く、厳しくなってしまいます。

この構図は、別に特別なことではありません。

ところが、ここで「お客さん」を「派遣先」、「お店」を「派遣元」に置き換えてみる。

すると、途端におかしなSprechchorが巻き起こるわけです。

これってどうなんだろう、と思ってしまうのですよね。

派遣社員が派遣元へ抗議するのは、ぜんぜん問題ないと思うのですよ。

言ってみれば、派遣社員は派遣元のお客さんみたいな立場でもあると思うので。

派遣元は、契約している派遣社員の雇用先を確保するのが使命なわけです。

さらに言えば、雇用先を確保出来ない派遣会社は、企業運営が出来なくなって潰れるだけです。

この不況で、失業率が増えるというのが大問題であることは間違いないです。

また、いわゆる「負のスパイラル」も、何とかしなくちゃいけない問題だと思います。

ただ、この「負のスパイラル」は、個別要因というのも重要なので、一口に救済と言っても難しいですけども。

下手したら、一昔前の共産国家みたいな事になりかねないですから。

とにかく、雇用対策を何とかしなくちゃいけないというのは、確かにその通りなのです。

しかし、その前提は同じなのに、その後の対応というか、反応というかが間違ってると思います。

それが、冒頭にも取り上げた

“派遣切り批判”を批判したい。マスメディアはつねに短絡する。
ということだと思うのです。

さらに言えば、短絡しているのは「マスメディア」に限った話ではないです。

本当に短絡してしまっているのは、たぶん「一般大衆」なんじゃないかと思います。

きちんと筋道だった考察がなければ、ちゃんとした結論へは辿り着けません。

表面の動きだけではなく全体的な構図をきちんと見なければ、筋道なんて見えてこないと思うのです。

そういう意味では、やはり「マスメディア」の罪というのは相当大きいのだな、と。

とにかく、雇用の場の絶対数を増やさなければ始まらない、と思います。

様々な技術革新によって、労働力としての人的資源を必要とする場所はどんどん減っています。

それは、なにも最近に始まった話ではなく、もうかなり昔から言われ続けてきたことだったはずです。

いま、急務となるべきなのは、例えばStart-up企業への支援とか、そういうことだと思うのです。

昔からある仕事において人的資源需要が減る一方で、その減った場所を埋める余地も出てきてるはず。

あとは、その場をきちんと整備して、雇用の場として正常に動くような仕組みを早急に創れば良い。

で、その鍵となるものが、地方分権だと思っているのですけれどね。

まあ、現在の政治状況だと、それも難しいのだろうな。