漂書

ぼちぼちと、ゆるゆると

Interop Tokyo 2012 1日目 「OpenFlowの概要とONFの役割」

年に一度開かれる、Network業界のお祭りイベント。

世間的には認知されることの少ない、裏方業界であるNetwork(IT-infrastructure)。

そんなNetwork業界のTop Vendorが一堂に会するBig Event、それが、Interopです。

今年も、この季節がやってきました。

例年通り、幕張メッセで開催されたInterop Tokyoに行ってきました。

今年は、SDN/OpenFlow元年ということで、会場もこの話題が大きく取り上げられていました。

自分もこの業界の人間として避けては通れないので、『風』を感じるために、というのが大きいです。

通常は、展示会場内に出展されている各社の展示を見て回るのが一般的かと思います。

しかし、今回の目的はそちらではないので、主に講演等に参加してきました。

以下で、その講演を聴きながら取った覚え書きを元に、各講演について書いていきます。

OpenFlowの概要とONFの役割 (Open Networking Foundation) 11:00-11:30

 講演者:牛尾 愛誠氏 (日本アイ・ビー・エム株式会社)

 初めに、ONFのExecutive Directorであるダン・ピット氏より挨拶。

「みなさんが、ここにあるたくさんのブースを楽しんでもらえることを期待しています」

 演目は、「SDN&OpenFlowの背景と概要」

 ・SDN/OpenFlowとはなにか?

  ・現在のネットワークの整理

   ・モバイルサービスプロバイダ

     端末が爆発的に増加し、また、サポートする機能が増加している。

     さらに、セルラー機能とWi-Fiをダイナミックにローミングすることが求められる。

   ・Web2.0系企業

     サーバ利用率をいかに高めていくかが課題。

   ・クラウド事業者

     ネットワークの柔軟な対応やビッグデータへの対応が求められている。

     それを回避するための手段として、高密度で高効率なクラスタリングが必要。

     また、サービスを広げていく中で、ネットワーク断をいかに回避するか

  これらの問題点を解消するため、ネットワークを抽象化し、論理的なものとして扱うことが必要となる。

  そのために、プログラムによって管理する仕組みが構築できないか?

  ソフトウェアによって管理する手法として、ONFとしてはOpenFlowが唯一の解だとしている。

 ・レイヤ抽象化のフレームワーク

  ・自立的に動作する機器の集合体

   →データを転送する機能と経路を制御する機能を分離してソフトウェアから管理する。

  ・経路機能を集約させることによって、柔軟でシンプルな管理をめざす。

 ・アプリケーション層

  → ネットワークポリシー、セキュリティ、トラフィックエンジニアリングを担当する。

 ・制御プレーン層

  → アプリケーション層で決められたネットワーク層の定義にもとづいて経路制御を転送層に指示する。

 ・データ転送層

  → データ転送のみを担当する。

 標準化

 ・制御プレーンとスイッチの間を、OpenFlowという「プロトコルインタフェース」で制御を行う。

  → トラフィックの効率的な制御が可能

  → パケットのヘッダを見て転送する

 ・制御プレーンとアプリの間は、「プログラマブルインタフェース」で制御を行う。

  → ONFでは、このインタフェースを「ノースバウンドAPIと呼称している。

     10種類以上のAPIがあり、それを収集し分析しようとしているが、まだコミットメントには至っていない。

 ・データ転送する機能と制御する機能を論理的に分割し、その間をOpenFlowプロトコルで繋ぐ。

 ・データ転送のメカニズム

  →データ転送プログラムが、トラフィックの類型からアクション定義を作成する。

   その定義に基づいて、パケットを転送するアクションをデータ転送層に指示する。

 ONFの展望として、ネットワーク装置がどう変わるかの説明

 ・ネットワーク装置の世代交代

  → これまでは、ベンダ固有のプロセッサなどの高価な機器・デバイスが必要だった。

  → しかし、今後は、より安価な機器やプロセッサが出てくるだろう。

  → これまでは「もの」だったものが、「ソフトウェア」になっていく

 ・ ネットワークの制御のあり方

  → 自立的な分散処理(スイッチという点とケーブルという線)から、

    面としての制御が可能な構造に変わっていく

  → ネットワーク7層の厳格なプロトコルによって、ハードによる構成情報によって制御されていたものが、

   プログラムによって制御することが出来る仕組みに変わっていくだろう。

 ONFとは?

 ・2002頃から、OpenFlowの開発が始まった。

 ・2009年に第1商品のモデルがリリースされた。

 ・去年3月、研究段階から商用段階に移るだろうという予測が為され、ONFが発足された。

 ・これまでの研究チームから、標準化作業を継承している。

 ・ONFの主要な9つの団体は、ユーザ企業(GoogleYahoo!、NTT Communicationsなど)を主体としている。

 ・ONFのメンバー企業は71社。

 OpenFlowについて

 ・今年の4月、OpenFlow Specicationの1.3.0をリリースした。

 ・これまでは、データ転送のプロトコルを改善、改訂してきたが、

  これまでのような数ヶ月ごとのアップグレードから、

  各所からのフィードバックを受けて、安定したプロトコルの策定をめざす方向へと変えていく。

 ・今後、バグフィックスをメインに出していく予定であり、メジャーアップグレードはしばらく控える

 ・構成定義、テストに関する仕様に関しては、従来通り、積極的な機能拡張をしていく。

 今後の動向

 ・SDNを新しいネットワーク標準にしていく

  → ユーザ主導の見地で市場を開拓し、育成していく。

 ONFの活動について

 ・標準化活動

 ・アーキテクチャフレームワークの開発

 ・マーケットにおけるSDNの普及活動

 ・知財関係の調停役

  → ONFに参加している企業はロイヤリティフリーで使用可能

    ただし、ONFは知的財産権を保持しない(開発元が保持)。

    構成定義や運用管理についても、メンバ同士で意見交換をしながら発展させていく

 OpenFlowの仕様については、1.3.0で一旦フリーズする。

 ・今後、重要になっていくワーキンググループは、検証、仕様策定など。

 ・OpenFlowをどうやって育てていくかを検討する委員会

 ・ノースバウンドインタフェースの具体的に存在する仕様を集積し、

  将来的には、ONFとして積極的に標準化するかもしれない

  → 現在は情報収集をしている。

 ・ユーザ利益にいかにして最大化していくかを検討していく。

 ONFの取り組み

 1.SDN/OpenFlow技術の拡張し、伸ばしていく

  ・無線、DC内によるWAN/LAN統合を促進していく。

  ・セキュリティも強化していく。

 2.現実の世界に利用可能な使用に育てる

  ・相互運用性、適合性、相互接続の場の策定

  ・リファレンスとなる実装例の公開など

 3.啓蒙活動

 SDN/OpenFlowとは?

 ・ネットワークは、コンピューティングの一つの側面に過ぎない

 ・ネットワークへの接続は物理的なものではなく、プログラマが支配していくものになるだろう。

 → オペレータは、ソフトウェア自身か、それを管理する組織が担当することになるだろう。

 → ITは戦略的ビジネス価値を生み出すものである。

 ・ネットワークを、よりITにおける重要な位置であると位置づけている

 まとめ

  業界動向:ネットワーク上の大きな変動→SDNを抜本的に新しい、重要な理念

  OpenFlow:真のSDNを実現するために不可欠な技術

  ONFとは、シリコンバレーと日本にある、業界の指導者的存在が集まる場所である。

感想

 いまの状況を、非常に分かりやすくCompactにまとめた良い講演だったと思います。

 衝撃的だったのは、「NetworkはProgrammerが支配することになるだろう」という発言ですね。

 業界動向として、確かにそういう方向に進んでいってはいますが、改めて突き付けられるとドキッとします。

 自分たちの仕事について、改めて、再考が必要な時期に来ているのだなと感じました。